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この街は多くの人を呑込んで息づいている
昔、ジョディという女が働いていた店の灯かりもそのままだ
いつも帰りがけに寄ったものだ

あの頃は寂しさを紛らわすのもあったが、惰性で寄っていた
いつもこの時間から、店が開く
最初の客は俺だ、太っちょの店長が老眼鏡の上目使いに俺を見る
「いらっしゃい」と一言いって、またグラスを磨く
いつも、1かけのパンと少しのポテトサラダとスープのディナー





    
食事が終わると「いつものヤツを」という。
何も言わずにバーボンがグラスに注がれて出てくる
いつも、1杯か2杯飲み終わったころに彼女が現れる

おれの傍に座って、水割りを呑む
彼女は俺が食べ残したサラダをつつきながら世間話をする
げせわな話から最近のニュースまで
いつも代わり映えのしない話題だが、心が安らぐ
別に彼女に惚れている訳ではないが、なんか落ち着く





都会という街に息づいている人間という動物は
孤独にさいなまれて、孤独の集団で生きている
街の灯かりは煌びやかで、とても冷たい

彼女は30を過ぎてこの商売に入ったそうだ
そしてこの街に流れてきた、生きていくために
この街の灯かりのもとで孤独と闘いながら生きていく
それも人生なら仕方がない、流れるままに生きている
つかの間の安らぎを求めて、この吹き溜まりに
灯かりをもとめ、安らぎを求めて





この街は多くの人を呑込んで息づいている
昔、ジョディという女が働いていた店の灯かりもそのままだ
店に寄る前に、この運命が変えられればと思う

彼女もそう思っていたに違いない
ある日いつもと同じ時間に店に寄った
いつものことだが太っちょの店長が老眼鏡の上目使いに俺を見る
「彼女は辞めたよ、男と幸せになるそうだ・・・今日は奢るよ」
羨望が頭をよぎる、急に寂しさがこみ上げて、何も言わす店を出た

あれからは、あの店に寄ったことはない。


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